◇市の口座に返済の記録が残っているはず

 富山県高岡市の「単コロ」問題。これが市の説明通り「財務担当者の勘違い」だったらどういうことになるのか、今回から数回かけて考えてみたいと思います。この仮説にしたがって、今後関係各所に取材をしていきます。

 市の説明は、「単コロではなくてオーバーナイトだった。担当者が報告作成時に間違えた」というものでした。市の作成したexcel表に単コロを示すコード「2」が選ばれていることは取材で確認されています。

 ということは、すべての短期貸し付けはオーバーナイトで行われていて、excelシート上の記入だけ3年間「単コロに」に間違え続けた、という説明になります。

 その説明通りなら毎年、年度末にオタヤ開発から貸した金の返済があっているはずです。もちろん現金で持ってくるわけではないので、市の持つ金融機関の口座に毎年、記録が残る、ということになるでしょう。

 逆に単コロならその記録がないはずです。

 ですから「単コロではなくオーバーナイトだった」という証明は、最終的にはそこでできると思われます。

◇監査委員は制度変更を熟知していたはず

  では上記のことを前提に、その先を考えてみます。

 連載第3回で触れた、政令市を除く市町村の健全化判断比率の公表についての健全化法第3条の内容を振り返りましょう。

・首長は、4指標の数値と算定の基礎となる書類を監査委員の審査に回し、その意見を付けて議会に報告するとともに、公表しなければならない。

・首長は公表した健全化判断比率を速やかに都道府県知事に報告。報告を受けた都道府県知事は、速やかに総務大臣に報告しなければならない。

 担当者が作成したデータに基づく書類は監査委員の審査を受けなければなりません。当然のことですが、担当者の「勘違い」が簡単に表に出るような仕組みにはなっていないのです。

 監査委員による今回の審査のポイントは2つです。

1 単コロ・オーバーナイトは2016年度からデータへの反映が始まった、関心事の問題だった

2 「単コロ」に気づいたら事実を確認しない事はありえない

 高岡市の単コロに関する審査で問題になるのは2017年度から2019年度決算です。

 高岡市の監査委員は3名ですが、市のホームページによると現在務めている3人のうち2人(その1人は公認会計士の方です)は2016年度決算の審査をする以前に就任されています。つまり、健全化法の一部改正による変更点などについて熟知する立場にありました。

 以前書いたように、単コロやオーバーナイトがあったことが分かるデータが表示されるようになったのは、2016年度決算からです。つまり制度が始まりまだ関心が高く、運用もこなれていないこともありうる、最も注意すべきものがこのデータだったはずです。

 オタヤ開発への短期貸し付けは、2016年度は「オーバーナイトで処理していた」という「自己申告」でした。監査委員は当然、それを具体的な書類・記録や担当者のヒアリングなどもやりながら、それが事実かを確認し、確かにオーバーナイトだったと認定して意見書をまとめたはずです。16年度の意見書をご覧下さい(赤線は筆者)。

高岡市平成28年度健全化判断基準の審査意見から

 「算定の基礎となる事項を記載した書類は、適正に作成されていると認められた」としています。

 そして制度2年目の2017年度、総務省から早期にやめるよう通知が出ていた「単コロ」に変更されたのです。監査委員がそれに気づけば、それが事実なのか確認しない訳がありません。そして「勘違い」なら当然に訂正されるはずです。何せ非難されてしかるべき「単コロ」が、しかも間違いなのに公表され県や総務省にデータも送られるのです。

 その2017年度の意見書です。

高岡市の平成29年度健全化判断比率の審査意見から

 2018年度、19年度も同じ文面です。監査委員は「算定の基礎となる事項を記載した書類は適正に作成されている」としています。

 「単コロ」という重大な意味を持つ書類が、単純な記載ミスだとすれば、これは監査委員の仕事を根本的に疑わなければならなくなります。本当にそうなのでしょうか。監査委員はきちんと事実を確認していたのではないでしょうか。

(朝日新聞ジャーナリスト学校・真下聡)

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