「健全化判断比率の基礎数値」総務省が全国分を公表

 富山県高岡市の「単コロ」問題。前回に引き続き公開されている情報から読み取れることを解説していきます。

 今回取り上げるのは、「財政状況資料集」に掲載されている「将来負担比率」について、それを算定するためにまとめられた「基礎データ」。つまり、前回紹介した表に載っている数字の、それを計算するための元データです。

 財政健全化法は政令市を除く市町村の健全化判断比率の公表について、以下のように定めています(第3条)。要約すると--

・首長は、4指標の数値と算定の基礎となる書類を監査委員の審査に回し、その意見を付けて議会に報告するとともに、公表しなければならない。

・首長は公表した健全化判断比率を速やかに都道府県知事に報告。報告を受けた都道府県知事は、速やかに総務大臣に報告しなければならない。

 つまり、市当局→監査委員審査→議会報告→公表→都道府県→総務省という流れとなっています。

 さらに実際には、健全化判断比率の算定にあたっての基礎データも総務省まで報告されており、そしてそれは、参考にできるよう誰でも読める形で公表されているのです。

 それが「健全化判断比率の基礎数値」と呼ばれるもので、総務省のサイトでダウンロードできます。

  このデータはexcelファイルで、都道府県分と市町村分に分かれています。すごいのはそれぞれ全都道府県、全市町村のデータがまとまっていて、検索・絞り込みができるようになっていることです。1700以上ある市町村のデータは膨大で、1本のファイル(1年分)だけで90MBぐらいの重さです。

 この中には4指標(実質赤字比率・連結実質赤字比率・実質公債費比率・将来負担比率)を計算するに当たっての要素となる細かなデータが収められていますが、今回取り上げるのはその中の「4⑥Hア表」と呼ばれる表です。

 この表によって市町村の「単コロ」「オーバーナイト」の詳細がある程度分かります。

 まずは最新の2019年度のものを実際に見てみましょう。

 このように1行ずつ、北海道の札幌市から沖縄県与那国町まで、全市町村のデータが載っています。

 ではこの表の見方を簡単に確認しておきましょう。

 「特定短期」とは「特定短期貸付金等」を省略した表記です。総務省の言葉遣いではオーバーナイトのことを「特定短期貸付金」と呼び、単コロも合わせると「特定短期貸付金等」という言い方になっています。A欄にはオーバーナイトも単コロも区別なく金額を載せます。なおこの表の金額の単位は千円です。

 例えば小樽市の場合、小樽観光振興公社に10500千円(1050万円)の短期貸付を令和元年度にしていて、それを「オーバーナイト」か「単コロ」で処理していた。これの将来負担比率の分子に反映する負担見込み額は1割の105万円--という風に読めます。

 この金額が「オーバーナイト」なのか「単コロ」なのかは「貸付金の種類」欄のコードで示します。総務省が用意しているコード表を見てみましょう。

 1がオーバーナイト、2が単コロと明記されています。

◇1700以上の市町村でオーバーナイトは3%程度

 では、この表の「貸付金の種類」欄を使って、オーバーナイト=1と単コロ=2だけを表示してみます。

 

 ご覧の通り、約1700の市町村の中で、オーバーナイトか単コロをしているのは2019年度で約50自治体。全体の3%ほどにしか過ぎません。そしてその中で単コロはというと、全国の市町村で唯一、高岡市のみが「貸付金の種類=2」となっています。

 実はこの表はもっと横に長く続いている表です。というのは現在表示されているのは「法人1」のみ。つまり各自治体で複数の団体にオーバーナイトや単コロをしている場合には、さらに法人2以降にも記載があるのです。

 しかし、「法人2」以降はいずれもオーバーナイトで、数少ない単コロは、最初の項目でしか出てきませんので、いくつの自治体がこのようなことをしているかを見るには「法人1」だけで十分なのです。

 では2019年度の前年、2018年度の表も見てみましょう。同様に「貸付金の種類=1、2」だけに絞り込んでいます。

 やはり単コロは高岡市のみです。オーバーナイトの数もほとんど変わりありません。

 もう一年遡って2017年度も見てみます。

 やはり単コロは高岡市のみです。

 2016年度も見てみましょう。この決算から、オーバーナイトや単コロの状況が表に反映されるようになりました。

 ここでは単コロは宮崎県串間市のみです。高岡市は単コロではなくオーバーナイトとして記載されています。

 2015年度の「健全化判断比率の基礎数値」には、この4⑥Hア表はありません。つまり、高岡市はこのデータが公表されるようになった初年度はオーバーナイト、翌年度から3年間は単コロとして自ら記載しているのです。

 「不適切」で「早期の解消」を総務省に求められたヤバい「単コロ」を通知の後に始め、全国1700の市町村の中で唯一3年間続ける…これは大変なことです。そしてこれを本当にやっていたのなら異常なことですし、これが単純ミスだとすればいくつものチェック機能が全く働いていないという意味でこれまた異常なことです(これはまた後で解説します)。

 今回はここまで。次回はその「単コロ」が何への短期貸し付けで行われたものなのか。その詳しい内容に入って行きます(表を見れば一目瞭然ですが)。

(朝日新聞ジャーナリスト学校・真下聡)

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