◇全国統一の形式、発表の主体は自治体

 富山県高岡市の「単コロ」問題。ここからしばらくは、公開されている情報から読み取れることを解説していきます。

 今回は「財政状況資料集」です。

高岡市「令和元年度財政状況資料集」の1番目のシート

 高岡市の財政状況資料集は、市のホームページにコーナーが設けられており、そこからexcel表一式がダウンロードできるようになっています。現在公開されているのは2013年度(平成25年度)決算以降についてで、最新版は19年度(令和元年度)決算。この3月に公表されました。

 

 高岡市のコーナーの冒頭で説明されている通り、財政状況資料集は「自治体の財政状況について、決算に基づき財政指標による分析や類似団体との比較などを行い公表するもの」です。表に掲載するデータの形式や内容は国によって統一されており自治体間で比較できるようになっていますが、公表主体はそれぞれの自治体、今回で言えば高岡市です。

 

 財政状況資料集は10年度(平成22年度)決算分から公表されるようになりました。年々掲載される項目が増えており、現在は15を超えるシートで構成されています。

◇「将来負担比率」の中に、単コロの数字

 今回問題になるのはその中の「(10)将来負担比率(分子)の構造」というシートです。

 最新の19年度(令和元年度)高岡市決算のものを掲載しました。

 ここに実は「高岡市が単コロをしていた」というデータが表示されています。

 …不親切なことに、どこにも「単コロ」などとは表記されていません。ですから一見しただけでは分かりません。

 

 答えは下の表の中、「将来負担額(A)」の「設立法人等の負債額等負担見込額」および「うち、健全化法施行規則附則第三条に係る負担見込額」の部分です。

 少し説明が必要です。自治体の財政破綻を未然に防ぐことを狙いとした「地方自治体財政健全化法」が施行されたのは、北海道夕張市が財政破綻した翌年の08年。本格施行は09年からです。

 実質赤字比率・連結実質赤字比率・実質公債費比率そして今回関係する将来負担比率という4つの財政指標を決め、その指標に危険な兆候が現れたら、自治体が自ら財政破綻を防ぐよう促す仕組みです。積極的な情報開示も義務づけられ、その流れで10年度から財政状況資料集が作成・公表されるようになったのです。

 そして健全化法は16年に一部改正され、内容が強化されました。その一つが「第三セクター等に対する短期貸付け」に関するリスクを4指標の一つ「将来負担比率」に反映させることでした。

 

 法改正直後の16年3月に総務省財務調査課長名で出された通知を引用しておきます。

 「地方公共団体の財政の健全化に関する法律の一部改正に伴う財政運営上の留意事項等について」という表題で、以下のような記述が見られます。

(1)第三セクター等に対する短期貸付け

①地方公共団体から第三セクター等に対して、反復・継続的に短期貸付け(同一年度に貸付と返済の双方が行われる貸付け)を行っているケースが見受けられる。

 第三セクター等に対する反復・継続的な短期貸付けは、当該第三セクター等が経営破綻した場合には、地方公共団体に対する返済がなされなくなるおそれがあるため、第三セクター等(地方道路公社、地方土地開発公社、地方独立行政法人以外の者に限る)に対する短期貸付金のうち、地方公共団体が実質的に負担すると見込まれるものについては、将来負担額として将来負担率上把握することとした。(改正後の健全化法第二条第四号チ関係)

 平成28年度決算からの適用に向けて、具体的な算定式については、今後、健全化法施行規則の改正及び告示の制定を行い、お示しする予定である。

②なお、いわゆる「単コロ」(反復継続的な短期貸付けで、その返済が出納整理期間に行われるもの)は、地方自治法に定める「会計年度独立の原則」の趣旨に反した不適切な財政運営であるので、早期に解消し、長期貸付け又は補助金の交付等によって対応すべきである。

 

 この改正の内容が反映されたのは16年度(平成28年度)決算からです。

 そして改正に伴って将来負担比率の算定で変わったのが、「設立法人等の負債額等負担見込額」「うち、健全化法施行規則附則第三条に係る負担見込額」なのです。

 「設立法人等の負債額等負担見込額」の欄はそれ以前にもありましたが、元々この額は地方道路公社や土地開発公社、第三セクターなどの借金のうち、自治体が将来負担する見込み額などを始め、いくつもの要素を足し合わせて出来ていました。それにさらに「短期貸付によるリスク」分も加えるようになった、という訳です。

 ですから、「設立法人等の負債額等負担見込額」の数字だけでは元々何のものなのか詳しくは分からないのです。

 そこで注目すべきなのが「うち、健全化法施行規則附則第三条に係る負担見込額」です。

 「健全化法施行規則附則第三条」では何のことか分かりません。条文を読んでみましょう。

(設立法人以外の者に対する貸付金に係る一般会計等負担見込額の特例)
第三条 当分の間、第十四条第三号に定める額には、当該年度の前年度に当該前年度内に償還すべきものとして当該地方公共団体の一般会計等から設立法人以外の者に対して貸付けを行った貸付金であって、その償還財源として、当該年度に、当該年度内に償還すべきものとして当該地方公共団体の一般会計等から当該設立法人以外の者に対して貸付金の貸付けを行ったものの額のうち、総務大臣が定める基準に従って算定した額を加算するものとする。

 条文を読んでもよく分かりませんんね。では次の図を見て下さい。総務省の資料から抜き出したものです。

 

2018年4月25日付総務省「財務調査課関係資料」より抜粋

 「健全化法施行規則附則第3条」が示すもの、それは「単コロ」そのものです。ちなみに「健全化法施行規則第14条第3号」が示すものは「オーバーナイト」です。

 ということで財政状況資料集の上記の表で、「うち、健全化法施行規則附則第三条に係る負担見込額」に数字が入っていると、それは確実に「単コロ」があったことを示します。

 

 ただし先ほどの総務省の通知に「具体的な算定式」という言葉があったように、ある年度に行った単コロなどの金額が丸々ここに載るのではなく、決められた計算式によって出された金額が計上されるので、金額についてはとりあえず無視して構いません。

 この高岡市の19年度(令和元年度)の表で言うと、ここから分かるのは、17H29)・18H30)・19R01)年度は単コロが確実にあったというものです。総務省が16年に「不適切な財政運営」であり「早期に解消すべきだ」と通知した単コロを、高岡市はその後に始めたことになります。これはどこかが指摘したのではなく、高岡市自身が「自己申告」しているものです。

 

 ただ、これだけでは何のことによって単コロが行われたのか全く分かりません。

 そこで別の公開資料でもう少し深く見ていきましょう。次回に続きます。

(朝日新聞ジャーナリスト学校・真下聡)

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