◇自治体財政を巡る問題を深掘り

 朝日新聞ジャーナリスト学校では、社内外の記者向けに自治体財政を理解するための講座を実施しています。その知見を生かし、メディアによる監視機能を高めるため、具体的な問題についてより深く分析・調査・取材しリアルタイムで報告していく企画「同時進行調査報告」を始めます。なお、これによって得られたものは社内外の講座で還元していきます。

 最初に取り上げるのは6月4日から6日付の朝日新聞地域面(富山県版など)に掲載された富山県第2の都市・高岡市とその第三セクター「オタヤ開発」を巡る問題です。

 まずは今回報じられた地域面の記事をご覧下さい。3本のそれぞれ第1段落のみ掲載します。全文はリンク先でお読みください。

オタヤ開発 債務超過 百貨店撤退後に特別損失 富山(6月4日付)

 富山県第二の都市、高岡市の中心部にある商業ビル「御旅屋(おたや)セリオ」(高岡市御旅屋町)を運営し、市が出資する第三セクター「オタヤ開発」(藤田衛治社長)が約28億円の債務超過に陥っていたことがわかった。中核テナントの百貨店撤退でフロアなどの一部を売却し、特別損失を計上したためだ。ただ、市はその後融資を行い、国の方針に基づく経営健全化方針も策定。あくまで事業を継続させる構えだ。

富山・高岡市が会計操作 三セクへ「一夜貸し」繰り返す(6月5日付)

 富山県高岡市が、市の第三セクター「オタヤ開発」に単年度の短期貸し付けを繰り返して元本返済を事実上先延ばしにする「オーバーナイト」(一夜貸し)と呼ばれる会計操作を2004~19年度に行っていたことが、市などへの取材でわかった。総務省は14年の通知でオーバーナイトをやめるよう全国の自治体に求めたが、高岡市はその後も5年にわたって続けていた。

三セク借金減 市資金で返済か 富山・高岡のオタヤ開発(6月6日付)

 富山県高岡市中心部の商業ビル「御旅屋セリオ」を運営する市の第三セクターで2019年度に債務超過に陥った「オタヤ開発」が、市土地開発公社に不動産を売却したり、市から長期貸し付けを受けたりした際、同じ年度内で借入金を大幅に減らしていたことが、同社や市などへの取材で分かった。借金を返済させるために市が財政支援したようにも見えるが、市は同社の使途を「答える立場にない」としている。

◇市公表資料には「単コロ」、取材には「勘違い」

 6月5日付記事で取り上げられた、高岡市から三セク「オタヤ開発」への短期貸し付けの会計操作について、実は2017年度から3年間は「単コロ」(単年度転がし)と呼ばれる、報じられたオーバーナイトよりもさらに不適切な会計操作をしていたと市の「財政状況資料集」などで自ら明かしていることが分かりました。

 ところが市はデータを公表している一方で、朝日新聞の確認の取材に「それは単コロではなく、オーバーナイトの誤りだった。前の担当者が勘違いをしていた」と説明しています。地域面の記事はその取材結果を反映したものです。

 しかし「単コロ」を示す資料について市は対外的に誤りを修正することも、議会や監査委員に報告することも「当面するつもりはない」とも話しています。

 手続きを踏むことも外に向かって訂正もしない以上、客観的には高岡市が公表している財政状況資料集に載っているデータは正確とみなすほかなく、誰が読んでも「高岡市は単コロをしていた」としか読めない状況です。

 高岡市のしていたことは本当に「オーバーナイト」だけだったのか。より悪質な「単コロ」はしていないのか。

 まずここから検証・分析を始めていきます。

 ◇「単コロ」「オーバーナイト」とは

 初回の今回は、問題となる「単コロ」「オーバーナイト」とは何かを解説します。

 朝日新聞2016年8月22日付朝刊1面の記事をお読みください。

2016年8月22日付朝日新聞朝刊から

 このように「単コロ」「オーバーナイト」はいずれも、自治体が年度内に貸して返済を受ける1年以内の「短期貸し付け」を繰り返すことに関する会計手法です。

 何が違うのかというと

◆単コロ=決算作業のために年度をまたいで資金の調整ができる「出納整理期間」(4~5月)を悪用し、翌年度に貸すための予算で前年度末に返済があったように装って処理するもの。

◆オーバーナイト=年度末に、借りた側に金融機関などからつなぎ資金を借りさせ、全額をいったん返済させる。翌年度に再び資金を貸し、それをもとに借りた側が金融機関などにつなぎ資金の返済をするというもの。つなぎ資金は3月31日から4月1日に借りることが多く(もっと長いケースもある)、借りた側はつなぎ融資の利子負担がある。

 

 総務省は上記の2016年の記事でも引用されている2014年の指針で、両方に共通する「短期貸し付けを繰り返すこと」について、実質的には長期貸し付けと同じであり制度の趣旨を逸脱していると指摘しています。その上で、貸した先が破綻すれば自治体の財政にも大きな影響を与えるとして「避けるべきだ」としています。

 特に単コロについては「会計年度独立の原則」という地方自治法の趣旨に反した「不適切な財政運営」であるとして、速やかに解消するよう求めています。

 

 借りる側としては、つなぎ資金を借り利子を負担する必要がない単コロの方がお得です。貸す自治体側としはもちろん、翌年度の貸付金を前年度の貸付金の返済に充てて前年度内に返済したように処理するという不適切な会計操作をする分、単コロの方が危険な、できればやりたくないやり方です。

 

 では次回以降で、高岡市がどのように「自己申告」しているのか、公開情報を使って詳しく解説していきます。

(朝日新聞ジャーナリスト学校・真下聡)

連載2を読む→

※情報をお寄せ下さい→このリンクの先の「スキルアップソリューション お問い合わせフォーム」からお願いします