【登場人物】
先生(先)=まちの財布について何でも知っている
市民(市)=会社員。今度の議員選挙に立候補を予定
記者(記)=今度、行政担当に指名されている
通常見込まれる経常的一般財源の規模
先 地方交付税シリーズ。最終回は「標準財政規模」について。
市 あれ、どこかで出てこなかった?
先 お、よく覚えてた。「【基礎の基礎2完】7/7 貯金と借金、危機の匂いをつかもう」で少しだけ触れてある。その時の記述はこうだった。
(標準財政規模とは)教科書的に言うと、各自治体ごと各年度ごとに算出される「標準的な状態で通常収入されると見込まれる経常的一般財源の規模」のこと。簡単に言うと、自治体の普通の状態を仮定して、そこで見込まれる「毎年きちんと入ってくる自由に使えるお金」の規模のこと。
市 あの時もだけど、今もよく分からないです。
先 「何なのか」よりも「何のためにあるのか」の方が分かると理解が進むかな。例えば前回出てきた時は「財政調整基金がどれぐらいあればいいか」という判断の指標として、「標準財政規模の10%」以上を挙げる自治体が多い、という話をした。
市 そうでした。
先 ではこの話を自分の財布に例えて考えてみよう。いつでも下ろせる貯金をいくらぐらいもっていれば、日々の生活でお金が足りなくなるということがないか。
市 給料の手取り1カ月分とか。でもそこまでは必要ないかな。
先 もう少し絞り込もう。まず「給料の手取り」と言ったね。なぜ?
市 実際に使える金額じゃないと意味がないからです。
先 だとすれば毎月自分で自由に使えるお金ってもっと少なくない?
市 手取り分からも家賃とか光熱費・携帯料金・定期代とかがなくなる。
先 でこぼこはあるけれど、その辺は毎月一定額がなくなるものだよね。
市 残るのは食費と遊興費・雑費みたいな。
先 それの1カ月分とかあれば、まあ大丈夫かな。旅行とかは別にして。
市 そうですね。
先 こんな風に考えていったとき、自治体財政ではどうなる?
記 予め使い道が決まっているお金は外す、ということですよね。つまり一般財源。
先 それもごくたまに入ってくる宝くじの当選金とかは除外するから、経常一般財源。安心できる貯金はこれのどのぐらいか、ということになる。ほら、「毎年きちんと入ってくる自由に使えるお金」。それを偏らないように「自治体の普通の状態」を仮定して、理論的に出した見込みの金額が「標準財政規模」。
記 なるほど。でもそれなら別に今、ここで改めて説明する必要はないんじゃないですか?
先 昔はこれまでの説明でよかった。でも今はそうじゃない。だからここで説明しないといけなくなった。
臨時財政対策債の発行可能額も
記 というと?
先 臨時財政対策債。経常一般財源って具体的には?
記 地方税と普通交付税が大きいです。
先 そしてその普通交付税の足りない分の代替が?
市 臨財債だ!
先 そう。臨財債発行可能額は地方財政法施行令で標準財政規模に含まれるとされている。だから最近の地方財政白書での標準財政規模の説明はこう。
地方公共団体の標準的な状態で通常収入されるであろう経常的一般財源の規模を示すもので、標準税収入額等に普通交付税を加算した額。なお…(中略)…臨時財政対策債の発行可能額についても含まれる。
市 なるほど。
先 とにかく、標準財政規模とはそういうもの。そして、これは多くの指標の基準、分母になっている。実質収支比率、実質公債費比率、将来負担比率などなど。名前が付いてなくてもさっきの財政調整基金のように、標準財政規模比が指標になることも多い。これからもたくさん出てくるから理解しておいてね。
市・記 はい。
先 ちなみに、決算カードではカードの右下あたり、例の「指標」のところに載ってる。
先 ではこれで「基礎の基礎3 地方交付税」は終了。お疲れさまでした。