【登場人物】
先生(先)=まちの財布について何でも知っている
市民(市)=会社員。今度の議員選挙に立候補を予定
記者(記)=今度、行政担当に指名されている
足りない分の一部を自治体が借金
先 今日は、必要な地方交付税総額に国の税収による財源が追いつかないときの話をします。地方交付税の財源って、「国税五税の一定割合」と言われるものが基本。所得税、法人税、消費税、酒税、地方法人税の、それぞれ決まった割合が充てられるようになってる。地方法人税は全額だけど。
記 で、その総額が地方交付税総額に追いつかないことって結構特別なんですか?
先 実は今の制度の形になったのは2003年度(平成15年度)からだけど、それ以前から多くの年で財源不足状態が続いている。
記 じゃあ足りない分をどうするか、きちんとしたやり方ができあがっているわけですね。
先 う。きちんとかどうかは何とも言えないから、まずは説明するよ。
記 はあ。
先 今のやり方はざっくり説明するとこんな感じ。
【国税五税分だけでは財源不足が生じたら】
・過去の経緯などを受けての財源への加算を国が行う
・それでも足りない分について、国と地方で半分ずつ負担する
・その地方の負担は地方債の発行によってまかなう=臨時財政対策債(臨財債)
これ。
記 地方債って、借金するんですか?
先 そう。足りない分に相当する額の借金をしていい、って国が認める。だから、決算カードを見て。歳入の下の方、四大財源に地方債があったでしょ。
その中にある。
記 確かに地方債による歳入の内訳として出てます。
先 だから、臨財債は地方債の一つ。
記 でも借金なら返さないといけないじゃないですか。
先 もちろんそう。
記 ちょっと待って、混乱してきた。これ、地方交付税の話ですよね。地方交付税って…
先 本来は地方税なのに、それを国が代わって徴収して配分するもの。
記 元々は自分たちのもので、でも事情があって国から配分されることになっているものが、足りないからといって一部とはいえ自分たちで借金しろって言うんですか?
先 そうなる。
後の交付税算定の中で「全額を手当て」
記 それ、いくら何でもひどくないですか?
先 うん。だからそれに対する手当が用意されている。
市 返す時に国が返してくれる、とかですか?
先 惜しい。さっき言った通り、これはあくまで地方債。地方債は自治体が借りて自治体が返すもの。国が返してくることはない。
市 そうか。。
先 でも考え方は間違っていない。借りた後の年度の地方交付税を算定する時の基準財政需要額に、その額の分が全額入ることになっている。だから、自治体がきちんと計画的にやれば、返すお金は地方交付税で手当てできる建前になってる。
記 なんか、とっても変なものですね。ちょっと怪しいなあ。
先 うん。臨財債を発行して得られたお金はね、
①地方交付税と同じように自由に使える一般財源である
②でもれっきとした借金だから、後で自治体が返済しなければならない
③でも元々が地方交付税の代替で、後から「基準財政需要額に算定する形で全額手当される」から、自治体の負担がないとも説明できる。借金の残高を表現するときに臨財債分は除外する自治体もある
④だから臨財債を説明する時に「実質的な地方交付税」と言ったりもする
という、ちょっとヌエというかキメラというか。。
市 これ、問題ないんですか?
先 それが、いろいろある。でもこれまた難しくなるから次回にね。