【登場人物】
先生(先)=まちの財布について何でも知っている
市民(市)=会社員。今度の議員選挙に立候補を予定
記者(記)=今度、行政担当に指名されている

たくさんの新しい言葉にビビらない

先   今日から「基礎の基礎3」に入ります。このシリーズでは歳入の中でとても重要な「地方交付税」と、それが波及する事項について7回でまとめて説明しておきます。

市   ふーん。どんなものですか?

先   例えば「臨時財政対策債」「財政力指数」「標準財政規模」とか。

市   うへえ。

先   地方交付税を説明するのだって、「基準財政需要額」「基準財政収入額」とかいろいろ出てくる。

記   こりゃあ大変だ。

先   だから一つ一つ丁寧に説明するから、がんばってついてきてね。

市・記 はーい。

国から渡される、自由に使えるお金

先   ではまず「地方交付税」とはどういうものなのか、簡単に説明しよう。決算カードのどこにあったかな?

市   歳入のところです。左上の青いところ。

記   あっ「四大財源」の時にでてきたな。

先   そう。上から2番目の赤枠のところ。これから分かるのは?

記   地方交付税は普通交付税・特別交付税・震災復興特別交付税に分かれる。

先   はい。このうち震災復興特別交付税は仕組みが異なるので分けて考える。

記   普通交付税と特別交付税は?

先   同じ財源の中の96%が普通交付税、4%が特別交付税と決まっている。ではこの中で大事なのは?

市   普通交付税です。普通交付税は全額「経常一般財源」ですね。毎年決まって来る使い道自由な財源。

先   地方交付税全体が使い道自由な一般財源。特別交付税は一般財源だけど毎年決まって来るわけではないので「臨時」一般財源。震災復興特別交付税もそう。

市   なるほど。あれ? そういえばこれ、国から交付されるおカネですよね。

先   うん。だから自主財源ではなく依存財源。

市   なのに使い道自由なんだ。

先   ここに地方交付税の一つのヒミツがある。

市   というと?

財源「保障」機能と財源「調整」機能

先   総務省のホームページで平成30年版地方財政白書の記述を読んでみよう。

「地方交付税は、地方公共団体間の財源の不均衡を調整し、どの地域に住む住民にも標準的な行政サービスや基本的な社会資本が提供できるように財源を保障するためのものです。地方交付税による財源調整が働いている結果、歳入総額に占める一般財源の割合は、人口規模等による大きな違いは生じていません」

先    もう一つ。今度は同じ総務省ホームページにある地方交付税の説明。

「地方交付税は、本来地方の税収入とすべきであるが、団体間の財源の不均衡を調整し、すべての地方団体が一定の水準を維持しうるよう財源を保障する見地から、国税として国が代わって徴収し、一定の合理的な基準によって再配分する、いわば「国が地方に代わって徴収する地方税」 (固有財源)という性格をもっています」

先   ポイントは四つ。地方交付税は①本来は地方税であるものを②自治体間の財源の不均衡を調整(財源調整機能)し③どこに住んでも標準的な行政サービスを受けられるようにする(財源保障機能)ために④国が地方に代わって徴収して、ある基準によって再配分するーーもの。

記   「本来は地方税」という考え方だから、自由に使える一般財源になるんですね。

先   そして地方財政白書が言うように、「地方交付税による財源調整が働いている結果、歳入総額に占める一般財源の割合は、人口規模等による大きな違いは生じてい」ない。どんな小さな自治体でも、一定の行政サービスができているのはこんな訳があるから。自治体財政の仕組みの中で、地方交付税がとても重要だということが分かるよね。

市   そうなんですね。知らなかった。

先   重要だけど、地方税のようにそれぞれの自治体が集めて終わりというものではないので、制度はとても複雑。だからこの地方交付税が、まちの財布の理解では一番大きなヤマになる。次ではどうやって配分するかを解説する。今日出てきた3つの交付税について、まとめた表を最後に付けておくから見ておいて。

普通交付税 特別交付税 震災復興特別交付税
性格 経常一般財源 臨時一般財源 臨時一般財源
財源

国税5税の一定割合

総額の96%

国税5税の一定割合

総額の4%

復興債・復興特別所得税など
配分方法

財源不足額を算定

8/31までに決定、年4回交付

臨時的・突発的事情を考慮

12月、翌3月に決定・交付

その他 財源超過の団体には不交付 普通交付税不交付団体にも交付あり

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