【登場人物】
先生(先)=まちの財布について何でも知っている
市民(市)=会社員。今度の議員選挙に立候補を予定
記者(記)=今度、行政担当に指名されている
「収入」「支出」と「貯金」「借金」
先 ここで「まちの財布」も含む、一般的なお財布についてもう少し詳しく考えてみようか。
記 はあ。
先 この図を見て。収入・支出・貯金・借金があるよね。この4つの関係を整理しておこう。
先 スタートは収入と支出の関係、つまり収支から。収入の方が支出より多い場合、つまり黒字の場合はどうなる?
市 残ったお金は貯金に回します。あ、借金があれば借金を返します。こんな感じです。
先 そう。じゃあ、収入より支出が多い、つまり赤字の場合は?
市 足りない分、貯金を取り崩します。もしくは借金します。こうですね。
先 一般的にはそう。で、これを「まちの財布」で考えると、貯金に関するところは大体おんなじかな。でも借金はちょっと違う。
市 といいますと?
先 まず貯金から整理するよ。まちの財布じゃ「貯金」のことを「基金」と言うんだけど、中でも自由に使える貯金が「財政調整基金」。これはまさに余ったら積み立て、足りなくなったら臨機応変に取り崩せるようにできてる。他にも基金があるけど、それは目的が決まっていることが多くてそう自由には使えない。
市 借金はどうですか?
先 日常的な経費が足りなくなったから自由に借りる、というような借金はできない。できるのは、建物とかのインフラを作る際にきちんと計画を立ててお金を手当する場合の借金。住宅ローンはできても、日常的なカードローンはダメってこと。
市 つまり、こういうことですか。
記 じゃあ、赤字になりそうになったら…
先 うん、貯金を取り崩すのが第一。それでも足りない場合には、支出を抑える。例えば比較的急がない工事とか止める。さらには職員の給料を減らしたりすることもある。
記 なるほど。貯金がない自治体は危ない自治体なんですね。
先 臨機応変な対応が出来ない、という点ではそうだね。
市 でも、そもそも、なんで赤字にしちゃいけないんですか? 会社とか、赤字になるの普通でしょ?
先 ここでは簡単に説明しておくよ。貯金を取り崩したり歳出を一部取りやめたりしても赤字になってしまったケースというのはかなり少ない。2018年度までの10年で、全国の自治体で赤字になったのはのべ29市町村。赤字が複数年にわたった自治体を一つとして数えると、赤字になったのは21市町村しかない。
先 さらに個別の事例を見ていくと、実際には赤字にならずに済むはずだったのに、手続き上のミスで赤字になっちゃったところもある。自治体はとにかく赤字、これ正確には「実質収支」というものの赤字なんだけど、そうならないように何とかやりくりしている。で、さっきの問いだけど、
市 待ってました。
先 自治体の収支って、異常な財政運営をやらない限り実質収支が赤字にならないようにできてる。だからそれが赤字になると報道でも大きく取り上げられるし、国や県からも問題視される。さらにこの赤字が一定の基準を超えると、いろいろなペナルティーが国から課されることになる。だから自治体は、とにかく実質収支の赤字だけは避けようとする。
市 まだよく分からないなあ。
先 そもそも「実質収支」も、なぜそれが赤字にならないようになっているのかも分からないからね。でもこれ以上やっても難しいから、今日はここまでにしよう。ここでは、「まちの財布が破綻しないためには貯金が大事」だということは理解しておこう。