【登場人物】
先生(先)=まちの財布について何でも知っている
市民(市)=会社員。今度の議員選挙に立候補を予定
記者(記)=今度、行政担当に指名されている

表の縦と横の関係

先   歳入の次は歳出だね。どこにあったかな。

記   下の黄色いところです。

先   そう。これ、広いけど、同じものを二つの側面から示している。

記   「性質別歳出」と「目的別歳出」とあります。

先   それぞれの最下部、歳出合計が同じであることからも分かるよね。

市   性質別も目的別もイメージしづらい言葉だなあ。

先   うん。でもその下の「区分」を見ればおおよそ想像つく。性質別は人件費、維持補修費など。目的別は議会費、教育費など。

市   でもその関係が。

先   ヒント。議会費にも教育費にも人件費や維持補修費はある。

記   ということは、表の縦と横の関係だ!

先   ピンポーン。それを二つの別の表として表したのが決算カード。では、それぞれは何を示すのかな。

市・記 ……。

先   目的別は仕事別、組織別、行政分野別。性質別は経費毎に組織横断で整理したもの。例えば人におカネを使っているかとか、箱ものに使っているか、とかは?

市   性質別歳出。

先   教育とか福祉とかにどのぐらい使っているか、とかは?

市   目的別歳出。

先   というように、それぞれ見えるものが違ってくる。特に目的別はまちの政策がどこを向いているか、首長が何を考えているのか、分かりやすい。性質別は、どこにおカネを使いすぎているか、というようなチェックに使える。

記   なるほど。

先   特に大事なものだけ簡単に説明するよ。目的別では何といっても「民生費」。高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉、生活保護なんかだけど、特に高齢者福祉分がとても増えている。

    性質別でまず注目したいのは、「義務的経費」「投資的経費」。義務的とは法令で決められている経費のこと。支出が避けられない。だからこの比率が大きいと、他にやれることがなくなる。これを「財政が硬直的だ」と言う。義務的経費は、具体的には人件費、扶助費、公債費。

   人件費は職員の給料。非正規職員は別(物件費)。扶助費が福祉関係の手当。公債費は借金返済。民生費が増えているのだから、それに対応して扶助費が増えている。

市   ふむ。投資的経費は?

先   箱ものとか不動産取得とか、インフラ整備に充てるもの。これが問題。

市   というと?

先   以前は投資的経費が大きかった。道路や橋、建物などのインフラが足りなかったから。でもある程度整備されたのと、さっき話した高齢化関係の費用が増えてきたので、投資的経費は全国的には減ってきている。

市   はい。

先   ところが、自治体によっては今でもインフラに多くのおカネを投じているところがある。そうするとどうなるかな?

市   義務的経費が増えるのに、投資的経費も減らない。

先   すると?

市   おカネが足りなくなる。

先   そう。借金が増えて首が回らなくなる。貯金を毎年取り崩していって底を突いてしまう。例えば新幹線が来ることで新駅や駅前整備をしすぎちゃうとか、国体が来ることで施設を作り直したりとか。こんなことで財政を悪化させる例がある。最終的には実質収支が…

市   赤字になるんですね。

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