【登場人物】
先生(先)=まちの財布について何でも知っている
市民(市)=会社員。今度の議員選挙に立候補を予定
記者(記)=今度、行政担当に指名されている

決算カードでまずは確認

先   「収支」の次は「歳入」だ。下の決算カードのどこにあったかな。

市   左上です。

先   そう。この青い部分だよね。

先   もう少し詳しく見ていくと。これは左と右が別々の表になっている。分かる?

市   左が「歳入の状況」、右が「市町村税の状況」です。

先   その通り。で、この二つは別々に独立してあるのではなく、入れ子構造になってる。

市   というと?

先   「歳入の状況」の一番上、「地方税」の決算額を見て。

市   あっ、「市町村税の状況」の「収入済額」の一番下、合計と同じだ! 44,465,038。

先   もう分かったね。つまり、右の「市町村税の状況」って、左の「地方税」の内訳なんだ。

市   なるほど。でも「歳入の状況」の中にも「内訳」があります。

先   うん。「地方交付税」の下に「内訳」として普通交付税、特別交付税、震災復興特別交付税の3つがある。これはまさに地方交付税の内訳。つまりこの3つを足すと地方交付税の額になる。他には?

記   下の「地方債」のところに「うち減収補塡債(特例分)とか、うち臨時財政対策債」とかがあります。

先   これも内訳の一つ。でもさっきの地方交付税と違うのは、この二つを足しても地方債の額にはならないこと。つまり、地方債の額の中の重要なものだけ取り上げている

記   なるほど。

先   ここから分かることは、この決算カードにはすべての数字が収められているわけではない、ということ。省略している数字もたくさんある。

記   それでもA3。

先   そう。そしてこの字の小ささ。これだけ入れていても全部ではなくて、とにかく1枚に収容するために厳選した数字、ってこと。

市   厳選したってことは大事なことから入れた、ってことですよね。

先   じゃあ、何が大事なのか、それを確認しよう。

市   あっ、それって、前回出てきたなあ。

先   覚えてた? なんて言ったっけ。

記   言葉は忘れたけど、「いつも」と「決まってない」だったような。

先   すばらしい! それ用語にすると?

市   「経常」と「一般」「普通」?

先   おお。完璧!

財源を理解する3つの考え方

先   じゃあ、歳入に関係して、重要な3つの言葉の対を改めて説明します。

市   はい。

先   「歳入」というか歳入の元になる「財源」の分類なんだけど。

    まず最初に「一般財源」「特定財源」

市   決まってるのと決まってないのと…これは使い道のことですね。自由に使える「一般」の方が重要。

先   OK。だから特定財源=使い道の決まっている財源=は「ひもつき」財源とも言う。では次の言葉。「経常財源」「臨時財源」。これも大丈夫だよね。

市   毎年度決まって来るおカネと、そうでないおカネ、ですか? 毎年決まっている「経常」の方が大事。

先   うん。いいね。最後に「自主財源」「依存財源」

市   自主は「自分で」ってことで、依存は「自分でじゃない」ってことですか。

先   大体あってる。つまり、これは自分で集めたのか、他で集めたのか、ってこと。当然自分で集めた方が大事。自分でコントロールできるから。

市   だから大事なのは、「一般」「経常」「自主」の財源ってことですね。

先   そう! だからこれらに該当するものが、決算カードでも優遇されている、優先的に扱われている。

市   というと?

先   一つは「歳入の状況」の真ん中ぐらいにある「(一般財源計)」。わざわざここに小計を置いている。つまり、地方税から地方交付税が「一般財源」(自由に使える財源)で、それより下は一般財源ではない「特定財源」だということを示している。実際にはその下の使用料や手数料、寄付金など、一部は一般財源になるものもあるのだけれど、少なくともその全額が一般財源とされるのは地方税から地方交付税まで。

市   なるほど。

先   次に同じ「歳入の状況」の中にある「経常一般財源等」という数字の列。

市   おお、これはかなりのスペースを。

先   大事なものの証拠。これはつまりそれぞれの歳入の決算額の中で、どのぐらいが「経常」(定期的に入ってくる)「一般」(使い道の決まっていない、自由な)財源的なのかを示している。

市   そうすると、一番上の「地方税」で考えるとどういうことになるのかなあ。

先   地方税はさっき見たように全部が、自由に使える「一般財源」とされている。

市   はい。

先   だけど「決算額」と「経常一般財源等」との間には差があるよね。44,465,038と41,177,918。

市   はい。これは…

先   これは地方税はまるごと一般財源だけど、「経常」一般財源ではないものがあるということ。それは…

記   「臨時」一般財源だ!

先   そう! キミ、久々出てきたけど、眠ってなかったのか。

記   失礼な。。じゃあ、右の「市町村税の状況」に行けば分かりますよね。あれ?

先   うーん、そう簡単には分からないかな。少し説明が要る。

    総務省によると、この中の「法定外普通税」「法定外目的税」それから「都市計画税」が「臨時」に入るとされていて、他は「経常」に入ることになってる。福井市でいうと、44,465,038から都市計画税の3,287,120を引けば41,177,918となって、地方税の経常一般財源と一致する。

記   ふーん。ところで、「目的税」って特定の目的のために集める税ですよね。だとすれば目的税は「一般財源」じゃなくて「特定財源」だと思うんですけど。

先   一理ある。だけど分類上は地方税全体が「一般財源」。これは、特定財源の典型的な「国庫支出金」と比べてみると分かりやすい。国庫支出金は、何に使うのか国からガチガチに指定されて下りてくるお金。本当の「ひもつき」と言っていい。

    それに比べて地方税の「目的税」は、何に使うかの大枠は法律などで決まっているとはいえ、自分たちで集め、自分たちで配分しているワケ。だから、自分たちで決めているという意味で「一般財源」と言ってもいい。こういうことだと思う。

記   そうなんだ、と思えばいいってことですね。

先   そう。あまり気にしても先に進めなくなるからね。

    そういうことで、まとめよう。歳入で大事なのは「経常」「一般」「自主」財源で、決算カードでもそれを中心に表示している。だから、その最たる「地方税」は、別表で内訳まで示している。ここまではいいかな。

市・記 はい。

先   では、次にもう少し細かい所に入って行こう。

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