【登場人物】
先生(先)=まちの財布について何でも知っている
市民(市)=会社員。今度の議員選挙に立候補を予定
記者(記)=今度、行政担当に指名されている
世界の動きや国の政策も要注意
先 「基礎の基礎1」講座はこの6時間目で終了だよ。ということで、これから先に進むにあたっての注意をいくつか話しておこう。まず5時間目からの続きで先に話しておきたいことを。
市 お願いします。
先 これから普通会計の色々な数字や、それを元に出されたまちの力を測る指標なんかが出てくる。前の時間に「他のまちと比べる」と言ったけど、比べると何が分かる?
市 そのまちよりも自分たちのまちの財布が豊かかとか、貧しいか、とか。
先 そう。比べるグループ内での相対的な位置が分かる。でも例えば高校の試験でも、ある評価を超えないと進級できない、とかあるよね。
市 ありますね。
先 つまり、クラス順位のような相対的なものだけでなく、進級できる・できないという絶対的な基準もある。
市 はい。
先 後で詳しく学んで欲しいけど、まちの財布でも、ある水準を超えたり下回ったりすると、例えば借金をしにくくなったりするとか、何かが課されるというような指標があるの。前に出てきた「実質収支の赤字」なんかはそれに当たる。分析するときには当然それも大事。
市 なるほど。
先 もう一つ。キミの財布の中身が変わるのはどんな原因があるかな。
市 恋人が出来てお金を使いすぎるとか。
先 うん。これはその財布の持ち主の問題。あとは?
市 会社が傾いて給料が減ったとか。税金が増えて、たくさん取られたとか。
先 そう。普通会計の数字が動くのも、そのまちの事情によることもあれば、世界や日本の経済状況の変化によることもある。さらには国の政策が変わった事による時もある。2019年冬から始まったコロナ禍は企業だけでなく国や自治体の財政にも深刻な影響を与えつつある。そういう大きなトレンドにも気を配って考える必要があるからね。
市 はい。
先 最後に、実際にまちの財布を分析しようとした時に、どこから何の資料を入手するか、という話をしておこう。
記 それぞれのまちの役所からじゃないんですか?
先 もちろんそれも必要。それぞれの役所の人に話を聞くことも大事。でも「比べる」ことまで考えてみよう。全部の自治体を回らないと、基本的なデータが手に入らないのでは困ってしまうよね。
記 あっ、ネットにあるとか。ウィキなんかどうですかね。
先 細かなデータはウィキにはない。が、ネットには確かにある。それも膨大にね。キミたちはこれを使いこなせるようになろう。
記 それぞれのまちのホームページ?でもこれも面倒だなあ。県とかですか?
総務省のホームページは宝の山
先 国だよ。総務省のホームページに全国の自治体のデータがまとまって置いてある。もしくはここから全国の自治体にあるデータに行くことができる。まずはここで必要な資料を漁るのが効率的だよ。これについては後で…
記 触りだけでもここで。。
先 …。じゃあ、ネットで「総務省 地方財政」で検索してごらん。
記 総務省の「地方財政制度」や「地方財政状況調査関係資料」が出てきます。
先 「地方財政状況調査関係資料」に行ってみて。
記 おお、何やらたくさんリンクが。「地方財政白書」から「公共施設状況調経年比較表」まである。それぞれのリンクの先に、さらにデータが出てくる。
でも、多すぎて何を見ればいいか分からないな。
先 今はまだそうだと思う。これから学ぶ中で分かってくるから。もっと自分で工夫することも必要になるよ。
記 えっ?
先 これらのデータが本格的に公開され出したのはそんなに昔の事じゃない。そして毎年新たなデータが追加されてる。
記 へー。
先 公開されているデータには2種類あることを覚えておこう。一つは紙の文書をそのまま蓄積しているもの。後で説明する「決算カード」や「類似団体比較カード」など、PDF形式のものが代表的。もう一つは何かな?
市 データそのものを直接使えるものですね。Excelの表形式とか。
先 その通り。さらに政府が提供するデータベースを利用すると、膨大な量のデータの検索・ダウンロード・グラフ描画ができたりもする。このやり方を学び、工夫し、新たな分析手法を開発するのが大事だよ。
先 ただし、これらのデータは自治体が個別に発表したりする数字よりも遅れて提供される。だから最新の数字を手に入れるには、やはり各自治体に当たる必要が出てくるから。
市・記 がんばりまーす。
先 では続きは【基礎の基礎2】で。まちの財布の中身に入って行こう。