地方自治体の財政を学ぶ上で、最初に理解していただきたい最低限のことを連載形式でまとめました。
なお、書籍になっているテキストとしては、「習うより慣れろの市町村財政分析」(自治体研究社、大和田一紘・石山雄貴著)が一番分かりやすいです。適宜参照するとともに、この講座を読み終えてから通読すると、より理解が深まります。四訂版が最新です。
【この講座の登場人物】
先生(先)=まちの財布について何でも知っている
市民(市)=会社員。今度の議員選挙に立候補を予定
記者(記)=今度、行政担当に指名されている
まず自分の財布のイメージで考える
市・記 先生、教えて下さい。
先 何が知りたいのですか。
市 私はまちを良くしたいと思い、今度の議員選挙に立候補します。その前にまちの財政について知っておきたいのです。
記 私は今度、地方総局で行政担当になります。自治体財政の分析の仕方と、問題となる自治体を見つけられるようになりたいのです。
先 では二人一緒に基本的なところから伝授しましょう。まずは「基礎の基礎1」として全6回で。
先 まず「自治体財政」という言葉は難しいので、「まちの財布」と置き換えて考えます。この言葉は二つに分けられます。
市 「まちの」と「財布」です。
先 そう。みなさんは「まちの財布」についてはまだよく知らないのだから、「自分の財布」をイメージして考えよう。では「財布」という言葉で連想するのは?
記 お金、です。
先 はい。ではそのお金には2種類ある。
記 紙幣と硬貨です。
先 そっちで来たか…。キミはどう?
市 …
先 財布とお金の関係での2種類なんだけど。
市 財布とお金…。何か買う時に財布からお金を出して支払います。
先 そう。もう一つは?
市 給料が出たら銀行から下ろして財布に入れます。
収入・支出・赤字・黒字・収支
先 正解。つまり、財布との関係ではお金の「入り」と「出」がある。
市 「収入」と「支出」ですね。
先 うん。では「入り」と「出」があるとどうなる?
市 入りが多かったり、出が多かったり、ピッタリだったりします。
先 はい。その「入り」と「出」のバランスのことを「収支」と言います。入りが多くてお金が残った場合が「黒字」、出が多くてお金が足りなくなる場合が「赤字」。
記 でも、お金って常に出たり入ったりするわけで、どこかで区切らないとどちらが多いか決められないのではないですか?
先 いい質問。確かにこのままでは決められない。だから、ある期間ごとに区切って赤字か黒字か収支を決める。自治体の場合、それは1年という期間で行うんだけど。
市 あっ。「歳入・歳出」って聞いたことがあります。この「歳」って…
先 そう。「1年間の」という意味。「まちの財布」では1年ごとに区切って収入=歳入と、支出=歳出を確定させる。そのバランス、つまり収支を計算して赤字か黒字か判断する。「まちの財布」を考えるとは、つまるところ歳入と歳出、そしてそのバランスの収支を考えること。
市・記 なーるほどー。
【練習】下の図で、収支の赤字、収支の黒字を説明してみましょう。